あっ草花

草や花からも気づきを得られる、そんな境地を目指して

蜜蜂と遠雷 本

蜜蜂と遠雷
恩田 陸/著


いや~すごかった。
形容がたくみ。


この本を初めて知った時、内容が「ピアノコンクールの話」ということだけ覚えた。
「音楽の話を本で?音は表現できないやろうから、コンサートに関わる人間模様が多いのかな?」くらいに思ってた。
しかし、見事にそして予想以上に「ピアノコンクールの話」やった。


この本を読んで思い出したのが、俺が読んだ芥川賞直木賞受賞作品は同じように綺麗な言葉での形容が多かったように思う。
だから感想が「綺麗」とか「スラスラ読める」やったんやと思う。


「文化」を意識した賞だけはある。


この本は特に形容が多かったように思う。
音楽を文章で表すんやから当然そうなのかも知れないが、しかしそれでは物語がなかなか進まない。
だから俺は芥川賞直木賞が「面白い」とは感じないんや、と思った。

 

しかしそれらを差し引いてもこの本はすごかった。

だから本屋大賞にも選ばれたんやろう。

 

・・・・・・・

 

読んでいる最中、映画化されていたことを思い出した。

そして「この内容を映像にするのは無理やろう」と思った。
無理やりすれば冲方丁の「天地明察」のようになってしまうやろう。


そう思った時、「本屋大賞」より「芥川賞直木賞」の方が映画化された本数が少ない理由がわかった気がした。
もしかしたら状態を表す文章(形容)が多いから、物語としては量が少なく、映画を作るには尺が足りないのではないか。

 

この本はページ数もあり分量としては足りてそう。

だから映画化された。

しかし、綺麗な言葉を映像にするのは至難の業。

とすれば残るは物語としての「面白さ」

この本も「物語の面白さ」という面ではう~んとなった。


途中、こんな勝手な想像をしながら後半は一気に読んだ。
そこそこのページ数を、俺にしては早い期間で読了。


・・・・・・・


この本の文章は、「そんな場面には立ち会ったことがない」それなのにわかる。

体験したことがないことでも映像が浮かんでくるほど豊か。


自分は何かにつけて細かい方。
言葉で表現するのが難しい「なんとなく感じる」も含めると、人より過敏だと思う。


しかしこれに書かれている表現はその表しにくい「なんとなく」も含めて、それ以上のことを言葉にしている。

しかも綺麗な言葉で。
なんという語彙力の高さ。
なんという表現力の豊かさ。

 

演奏中の表現がこんなに多いとは。
繊細でわかりやすく、綺麗な言葉で多様に表現できるのがすごいと思った。
第156回直木三十五賞、第14回本屋大賞ダブル受賞に納得。


布石や伏線が好きな俺としては、物語としてはさほどやった。
それなのに「いつかまた読みたい」と思った。

 

・・・・・・・


見開き四分割が読みやすかった。


ページ数が多く手が疲れるから本を机に置いたまま手を離して読もうとすると、ページが動こうとする。
それを重しで抑えるのはいいんやけど、重しの所にくると動かさないといけなくなる。
重しが大きすぎるとその回数が多くなるし、小さすぎると端に置けなくなり結局手で抑える場面が増えてしまう。


しかし、この四分割なら重しを動かす手間は1回でいい。
上半分を読んでいる時は下半分に、下半分を読んでいる時は上半分に。


そんなことにも感動した本やった。